第1日目 6月23日(土)

 

 

英語教育研究法セミナー

 

コーディネーター: 浦野 (北海学園大学)

提案者:      浦野 (北海学園大学)、田中 武夫(山梨大学)

                                                酒井 英樹(信州大学)、本田 勝久(大阪教育大学)

 

本セミナーは、英語教育に関する研究をこれから始めようとする方や、既に研究を行っているものの、課題設定の仕方や研究手法等に自信の持てない方を主な対象に、研究を行う上で注意すべき点や取るべき手段など、特に研究方法に焦点を当てて提案、議論することを目的とする。また、既に英語教育研究を数多く行ってこられた方々にもぜひご参加いただき、活発な意見交換、質疑応答を期待したい。セミナー1は一昨年度(山梨大会)および昨年度(和歌山大会)のセミナーと基本的に同内容の発表を、セミナー2は昨年度のものに新しいテーマも加え、発展的な内容としたい。発表内容および発表順は次の通り:


 

 

セミナー1: 23日(土)10:30-11:30 (1201教室)
(セミナー1は昨年度、一昨年度のものと基本的に同内容。)
 (1)「よい研究」の条件と種類 (浦野 研)
 (2)研究論文の書き方・まとめ方 (田中武夫)

 

 

セミナー2: 24日(日)12:15-13:15(昼食と共にお聞きください)

*2日目ですのでご注意ください。

セミナー2は2会場で同時進行。)
・セミナー2A (181教室)

<研究テーマを深め、それを実現する過程>
(1)研究テーマの見つけ方・深め方 (田中武夫)
(2)実験研究をすすめるときに (酒井英樹)

 

・セミナー2B (182教室)

<統計処理について、理論から実践へ>
(1)p値の意味すること、しないこと (浦野 研)
(2)調査研究をすすめるときに (本田勝久)

 

 

 

 

※ 英語教育研究法セミナーの発表要旨は次ページ以降に掲載してありますが、

2日目(624)のセミナー2A・2Bについても一括掲載してあります。

 

 

セミナー1  23日(土) 10:30-11:30 (1201教室)

 

(1)「よい研究」の条件と種類   

浦野 研(北海学園大学)

英語教育に関わる研究を行うとき、まずはその研究を何のために行うのかを明確にする必要がある。その上で、その目的を達成するために適切な研究課題を設定し、さらにその課題に対して適切な研究手法を選択、決定することが重要である。本発表では、特に実証研究(何らかのデータ・情報を集めることによって研究課題に対して答えを導き出す研究)を中心に取り上げ、英語教育研究の文脈における「よい研究」の条件について具体例を交えながら提案する。同時に、研究の種類として考えられる主な手法を紹介し、研究立案の段階で研究課題にふさわしい研究手法の選び方についても議論したい。

 

(2)研究論文の書き方・まとめ方

田中武夫(山梨大学)

どのような研究であれ、最終的には研究論文の形にまとめることになる。この論文作成は、研究プロセスの最終段階とも言え、内容が優れた研究であっても最終段階の論文作成がまずければ良い研究にはならない。本発表では、英語教育に関する研究論文をどのようにまとめればよいのか、どのように研究論文を書くべきなのか基本的な事柄についてポイントを提示する。具体的には、(1) 研究論文によくあるケースにはどのようなものがあるのか、(2) 良い研究論文の規準とはどのようなものか、(3) 良い研究論文の構成とはどのようなものか、(4) 読者にとって読みやすい論文をどのようにして書けばよいのか、について、これまでの個人の経験や大学院等での指導経験をもとに、自分の反省をも含めて提示することにする。

 

 

 

 

 

セミナー2A  24日(日)12:15-13:15(181教室)(昼食と共にお聞きください)

 

(1)研究テーマの見つけ方・深め方

田中武夫(山梨大学)

どのように研究テーマを見つけ、どのようにテーマを深めていけばよいかという課題は、研究を行う者であれば誰もが直面する。研究テーマを見つけ深めるプロセスとしては、(1) 情報収集の段階(情報を収集する、情報を取捨選択する、情報を組み合せる)、(2) 絞り込みの段階(焦点を絞る、現状・課題・解決を見出す、論点を見つける)、(3) 思考整理の段階(考えを書き出してみる、仮説や問いをもつ、主張することを決める)などが考えられる。これまでの卒論指導や修論指導を通して気づいたことや、自分自身の反省などから感じていることをまとめ提示してみたい。

 

 


(2)実験研究をすすめるときに

酒井英樹(信州大学)

実験研究を進めていくときに留意すべき点を、(1) 研究方法の決定と (2) データの処理に関して提示する。具体的には次のような疑問が生じたときに、指針を得られるようにしたい。実験計画をたてるときにどんなことに注意したらよいのだろうか。統計処理を意識して計画しなさいといわれるけど、どう意識すればよいか。予備実験って何のためにやるのか。統計処理を行うときの注意点は何か。使用するテストをどのようにして作ったらよいか。テストの信頼性や妥当性についてどう考えればよいか。学校の中間テスト・期末テストを使ってもよいか。統計に関して、わかりやすい参考書はないか。これら、すべての疑問に、的確に答えを示せるわけではないが、自分の経験や大学院等での指導経験をもとに、参考となる情報を参加者と共有したい。

 

 

セミナー2B  24日(日)12:15-13:15 (182教室)(昼食と共にお聞きください) 

 

(1)p値の意味すること、しないこと

浦野 研(北海学園大学)

実証研究のうち、何らかの数値をデータとして扱ういわゆる量的研究では、英語教育に関わる研究論文や学会発表においても、「p < .05」や「有意差が見られた」といった表現がよく使われる。また、研究を行う側も読む(聴く)側も、統計処理の過程を見ずにp値のみを確認し、それに基づいて結果の解釈・議論・批評を行うことが多い。ところが、実際の研究には被験者数 (sample size) が極端に少ないものや多いものがあり、p値だけを見て研究結果の解釈を行うことには問題がある。そこで本発表では、統計手法の中でも比較的イメージしやすいt検定と相関を用い、p値がどのように導き出され、それが何を意味して、何を意味しないのかを解説したい。主にp値と被験者数の関係に注目し、効果量 (effect size) や検定力 (power) といった概念を紹介しながら、被験者数が特に少ない(多い)ときの結果解釈における注意点や、先行研究の結果を比較・分析する方法(メタ分析)も紹介する。

 

(2)調査研究をすすめるときに

本田勝久(大阪教育大学)

実験研究と同様に、調査研究を進める上での留意点を (1) 研究方法の決定、(2) データ処理に関してそれぞれ提示していく。ここでの調査研究とは、主に以下の2種類を意味するものとする。 

1)      観察によるもの「見ること」により学習者を理解しようとするもの

観察法: 学習者の行動を観察・記録・分析し、行動の質的・量的特徴や行動の法則性を解明すること

2)      言語を媒介とするものà「聞くこと」により学習者を理解しようとするもの

質問紙法&面接法:行動そのものよりも学習者の感情や価値観・動機など、心の内面を理解すること

データ処理については、これまでのセミナーでの分析手法(χ2検定、ウイルコクスンの順位和検定、スピアマンの順位相関係数、重回帰分析)とは異なった検定を取り上げる。また、本年度は「ソフトの違い(EXCELで出来ること。SPSSでないと出来ないこと)」と「分析の違い(分散分析とt検定の違い、など)」について参加者の方々とともに議論していきたい。

 


第1日目 6月23日(土)

 

自由研究発表  第1日 第1室 (1201教室) @

 

辞書にみる英語語彙の頻度---OALDLDOCEを比較して

 

松尾 眞志(和歌山市立商業高等学校)

コーパスを利用して編纂された英語の辞書が数多く出版され、それら辞書にある頻度表示の恩恵で、英語学習にさいし、重要な単語がよりわかりやすくなってきた。では、それら辞書の高頻度の語彙は、すべて同じ単語なのだろうか。何億ものデータから得られた頻度であるなら、ある程度、頻度は似通ってくるのではないではないだろうか。前の版ではどちらもBritish National Corpusを使って辞書を編纂していたイギリス系のLongman Dictionary of Contemporary English 4(LDOCE) の高頻度語彙と、Oxford Advanced Learner's Dictionary 7(OALD)のキーワードを比較して、その実態を知ることは、学習者が効率よく勉強するためにも必要であると思われる。
 LDOCEは、7版ではLongman Corpus Networkを使い、見出し語に、話し言葉と書き言葉、それぞれ頻度が高い順に1000語ずつ3000語まで頻度がつけられている。OALDでは、主にBritish National Corpusが使われ、4版からはじめてOxford 3000という名のキーワードが明示され、見出し語に鍵印がつくようになった。しかし、この3000語は頻度だけで選ばれたのではない。選定基準は、頻度の高い語、使用範囲の広い語、そして、頻度は高くないがネイティブなら知っている語からなっている。
 そこで、これら2つの辞書の語彙を比較し検討することで、よく使われる語だけでなく、広く使われている語、ネイティブなら当然知っている語が明らかになってくるのではないだろうか。

 

 

 

自由研究発表  第1日 第1室 (1201教室) A

 

まとめて単語を学習する際に意味関係が記憶に及ぼす影響について

片山 智映子(三重県立志摩高等学校) 

第二言語学習にはたくさんの語を覚えることが必要である。実際に学習者の語彙学習に対する負担を軽減するための語彙学習や指導法についてたくさんの研究がなされている。たとえば、語を定着させるために授業中にその語を繰り返させたり、文中に含まれる未知語を推測させたり、関連のある語をまとめてグループにして覚えるグルーピング(grouping)等が挙げられる。特に、グルーピングを用いた語彙指導は教科書や市販の単語帳でよく見受けられ、新出単語とその反意語や類義語を一緒に提示したり、「月の名前」「動物」といった一つのテーマにそった単語を一緒に導入することが珍しくない。グループにされるのは,反意語,同意語,等位語,あるテーマにそった単語など様々である。単語どうしに関係がある語をまとめて覚えるのは一見効率的な方法のようにも思えるが,グループ内の語どうしが干渉を起こして学習を妨げることが報告されている(Higa, 1963; Tinkham, 1993, 1997; Waring, 1997)
 Tinkham(1997)は、グループ(semantic cluster, unrelated set, thematic cluster, unassociated set)として単語をまとめて覚えた場合、thematic clusterが覚えやすくsemantic clusterが覚えにくいことを実験で明らかにした。本研究は、3つのセット(semantic cluster, unrelated set, thematic cluster)を用いて、日本人英語学習者に口頭でreceptiveな面においてTinkhamの追実験を行った。Tinkhamの結果と異なり、thematic clusterが一番覚えにくく、semantic clusterunrelated setは有意な差が見られないことがわかった。詳細について議論をしたい。

 


自由研究発表  第1日 第1室 (1201教室) B

 

効果的な語彙指導とは−より印象に残る単語の出合いを演出する−

                                                       江口 優治(富山県立富山南高等学校)

語彙習得は、学習者個人の努力によるところが大きい。しかし、高校レベルまでの語彙は、学習者の一方的な努力のみに期待するのではなく、より適切な指導が語彙習得には重要であると考える。学習者が「語彙」を困難さの1つにあげていることからも、授業内における適切な指導法が求められている。
 そこで、どのような語彙指導が生徒にとっては、より効果的なものであるのかをテーマに設定し、4月より実際の授業において語彙指導を実施中である。調査においては、特別なtreatmentを施した語彙の保持率について一定の期間継続的に実施し、どのような効果があるのかを検証している。語彙は、大きく受容語彙と発表語彙に分かれるが、今回の調査では、教科書の新出語彙に焦点をしぼり、どの程度受容語彙として習得しているかを調査している。
 語彙は、あまり注目されてこなかった領域であると感じている。語彙指導においても新出単語の意味確認や単語テストがおもな語彙指導の現状であろう。「英語が使える生徒」を育成するには、語彙はinputoutput活動とともに、重要な活動の1つである。県内の英語T・Uの担当者に実施したアンケート調査からも、多くの教師が英語をどのように指導すればよいか、効果的な指導法を模索している。語彙指導は、その解決の1つに成り得ると考える。
 今回の調査は、勤務校の高校2年生(普通科)の生徒を対象に実施しているものの中間発表である。使用教科書は、Crown U(三省堂)Voyager(第一学習社)である。

 

 

自由研究発表  第1日 第1室 (1201教室) C

 

日本人英語学習者による語彙刺激の処理速度について

石川 慎一郎(神戸大学)

■研究の目的: 近年の研究が明らかにするように,語彙力とは多面的な概念であり(Nation 2001Aitchison 2003),意味論的知識(語義),音声的知識(発音),統語論的知識(語法・共起語),語用論的知識(社会文化的な語用習慣),音韻論的知識(音韻)などの種々の要因が関与している。語彙知識の根幹をなす意味と音韻は,母語話者および上級学習者にとっては高度に一体的なものとされるが(Klein et al. 1995),多くの日本人英語学習者の場合,英語の意味と音韻はむしろ分離的に扱われている可能性がある。両者の融合性ないし乖離性を調べるためには,それぞれの処理課題を遂行するのに要する時間を比較することが有効である。本研究においては,行動実験的手法により,学習者の意味論的処理課題遂行時間と音韻論的処理課題遂行時間を計測し,両者の乖離の程度と全般的な英語熟達度の関係を解明することを目的とする。
■研究の方法: 意味論的処理課題として,被験者は連続して2語の音声を聞き,それらが反義的関係にあるかどうかをボタン押しで回答することが求められた。また,音韻論的処理課題では,ペアの音声が押韻しているかどうかを判断して回答することが求められた。意味論的処理課題6題+音韻論的処理課題6題+コントロール課題3題からなるタスクセットを6回繰り返す実験セッションを3回反復実施し,最も結果が安定していた第2セッションを分析の対象とした。課題処理速度は,2語目の刺激が出された時間と回答ボタンが押された時間との差分の平均によって算出した。
■結果と考察: 分析の結果,多くのケースにおいて,コントロール課題への反応が最も速く,音韻論的課題がそれに続き,意味論的処理課題が最も時間を必要とすることがわかった。しかし,音韻論的処理課題に要する時間と意味論的処理課題に要する時間は被験者の英語能力によって興味深い変化を示した。

 

 

自由研究発表  第1日 第2室 (1211教室) @

A Statistical Analysis of the Correlation Between the Scores on the Minimal English Test and the Scores on the Kanji Test: A Preliminary Study [in English       

牧 秀樹(岐阜大学)・笠井 千勢(岐阜大学)

後藤 健一(岐阜大学学部学生)・今牧 浩隆(岐阜大学学部学生)

The present research investigates whether there is a correlation between one’s English as a Second Language (ESL) proficiency and his/her long-term memory. In this research, we used two tests and investigated a correlation between the scores on the two tests: (1) the Minimal English Test (MET) in order to measure one’s English proficiency, and (2) the Kanji Test (KT) in order to measure his/her long-term memory.
  The MET, developed by Maki et al (2003), is a five-minute test which requires the test taker to fill an English word with 4 letters or less into blank spaces of a printed passage while listening to the CD producing the passage. Maki et al (2004) found a high correlation between the scores on the MET and the scores on the College Entrance Examination (English Part) 2003 (CT 2003) (r=.72, p
<.05, n=629). This result indicates that, to some extent, the MET measures the same sort of ESL proficiency as the CT does. Therefore, we used the MET in this research, as a substitute of the CT.
  Maki (2006) developed the Kanji Test (KT) based on the 2005 Kanji Proficiency Test (KPT). The KT contains ninety kanji reading questions, which are randomly chosen from a collection of the past KPT questions from three grades (pre-second, second, and pre-first). We chose the KT as a device to measure one’s long-term memory, because one’s Kanji reading proficiency reflects his/her long-term retention of the readings of the Kanji characters which he/she has learnt/memorized in his/her life.
  We administered the two tests to 134 university students in Japan. The result of the present research showed a statistically moderate correlation between the scores on the MET and the scores on the KT (r=.57, n=134, p
<.05). This in turn suggests that there is a correlation between one’s ESL proficiency and his/her long-term memory to some extent. This finding is important in the research of SLA, because due to the result of the present research, researchers in this field should take into account one’s long-term memory, in uncovering the mechanism of acquisition of English as a second language.

 

 

自由研究発表  第1日 第2室 (1211教室) A

Correlation Between the Scores on the Minimal English Test and the Scores on the College TOEIC: A Preliminary Study  [in English]                       

梅澤 敏郎(岐阜市立女子短期大学)・牧 秀樹(岐阜大学)

後藤 健一(岐阜大学学部学生)・石川 茜(岐阜大学学部学生)

Maki et al (2003) developed the Minimal English Test (MET). The MET is a five-minute test which requires the test taker to fill an English word with 4 letters or less into blank spaces of a printed passage while listening to the CD. The Maki group have found relatively high positive associations between the scores on the MET and the scores on the Center Tests (English Part) (CTs) 2002-2005 (.60<r<.72).
 This paper investigates whether there is a correlation between the scores on the MET and the scores on another reliable English proficiency test: the College TOEIC. If there is a positive association between the scores of the two tests, we would have another piece of evidence for the hypothesis that the MET is actually a useful tool to measure university student’s English proficiency. For this purpose, we administered the College TOEIC at a junior college in Japan in November of 2006. There were two important findings in this survey.
 First, we found a statistically significant correlation between the scores on the MET and the scores on the College TOEIC for those who scored more than 535 points on the College TOEIC (r=.64, n=27). However, for those whose scores were less than 535, no statistically significant correlation between the scores of the two tests was found (n=24).
 Second, we examined a correlation between the scores on the MET on the one hand and the scores on the reading and listening parts on the other. We found that there was not a great difference between the correlation coefficient between the scores on the MET and the scores on the reading part (r=.45, n=27) and the correlation coefficient between the scores on the MET and the scores on the listening part (r=.50, n=27). This finding suggests, contrary to our expectation, that the MET more or less equally measures the English proficiency measured by the reading and listening parts of the College TOEIC. Therefore, it has turned out that the MET is not just a listening test, but a more integrated test which measures both reading and listening proficiency at the same time.

 


自由研究発表  第1日 第2室 (1211教室) B

 

A Comparison of Japanese and Vietnamese Junior High School English Textbooks and Testing  [in English]

DANG THI PHUONG(広島女学院大学大学院・博士後期1

  The aim of this paper is to report the analyses of the comparison of Vietnam and Japan English textbooks and English tests.   First, it compares three different English textbooks used for first grade in junior high school studentsNew Horizon 1, Sunshine 1 and New Crown 1 in Japan, with Tieng Anh 6, which is used for all junior high schools in Vietnam. The comparison of Japanese and Vietnamese English textbooks is significant to see the differences in the topics and teaching methods from the viewpoint of teaching for understanding. While some textbooks are difficult to use, others are easier for the teachers to help students understand, and easier to use communicative teaching methods, which facilitates students’ communicative competence emphasized by the governments. Concerning the topics and contents, New Horizon has a balance in the four skills, Sunshine focuses on listening and speaking skills, and New Crown mainly focuses on speaking and pronunciation, while Tieng Anh 6 has a large amount of content and is difficult for the students to understand. Second, this paper reports the relationship between teaching and testing using the year-end tests of both countries. The study on the testing is reported from the points of view of validity, reliability, and practicality. While the Vietnamese English textbook contains more content, the number of questions is less than those of Japanese tests. Also, in Japan the explanation in the tests and questions are given in Japanese but in Vietnam they are given only in English.  Special emphasis is given to the analyses of the content of textbooks and quantity of the tests, students’ understanding, and the criteria for marking examination papers. Finally, this presentation will describe how effective textbooks help students understand.  

 

 

自由研究発表  第1日 第2室 1211教室) C

 

Comparison of language performances in two paired oral tests  [in English]

山田 晴美(仁愛大学)

In this presentation, the presenter will compare two paired speaking tests she conducted in her pre-intermediate general English course. In one test, which was given at the end of the first semester of the course, students were given two situations in which they took roles of either an interviewer or an interviewee. In the second test, which was given at the end of the second semester of the course, students were given two topics to talk about. Both tests were videotaped and transcribed by the presenter. Questionnaires were used to gain information about the extent to which the students know each other and their feelings about the test. The results of the twenty students who took both tests will be analysed and compared qualitatively and quantitatively.

This study is part of an attempt to see how differences in task-types could affect students’ performances in paired oral tests.

 


自由研究発表  第1日 第3室 (1221教室) @

 

高校生英語学習者の文法知識と文法運用力との関係に関する研究―文法知識テストと英語運用力テスト結果を基に―

岡崎 浩幸(富山大学)

   文法知識(grammatical knowledge)と文法力(grammatical ability)が同じように定義されて場合があるが、Purpura(2004)によれば、「文法力は言語使用場面において文法知識を正しく使って意味を伝えたり、理解したりできる能力である」と定義されている。日本の中学・高校では依然として、文法規則に関する知識を問うテスト問題で、「あの生徒は英語ができる・できない」という判断を下していることが多いようである。
 
本研究では、高校教員5名と相談の上、教科書でよく扱われる文法項目や規則10個を選んだ。今回選んだ項目は関係代名詞(who),不定詞(副詞的用法)、現在完了、仮定法過去、仮定法過去完了、不定詞(名詞的用法It...to...)、間接疑問( Im wondering if)、関係副詞(where)、時制の一致、過去完了である。この項目に関する知識を問う文法知識テストと使いこなすことができるかを測る文法運用力テストを作成し、1ヶ月前には高校3年生であった大学生1年生93名に実施した。
その結果分析から、以下を考察する。
・二つのテスト結果の差が大きい項目とそうでない項目から何が言えるのか?差が小さい項目は知識として指導し ておくだけで使いこなせるようになるのか?
・文法運用力テストの結果から、高校生が学習している文法項目の習得順序を予測できるのか?

 

 

自由研究発表  第1日 第3室 (1221教室) A

 

二重目的語構文の直接目的語は受動化できるのか?

中屋 健一(信州大学大学院生)

 従来の研究では、二重目的語構文の直接目的語の受動化に関してはa. 現代英語、特に米用法では認められないといった否定的立場 (安藤2005)b. 直接目的語の受動化を否定するわけではないが、直接目的語よりも間接目的語を受動化するほうが好まれるとする中間的立場 (安井1994)c. 間接目的語も直接目的語も受動化することができるとする肯定的立場 (Dixon 2005)の3つの立場がとられてきた。この3つの立場の違いは、直接目的語の受動化に対する見解の相違にある。しかし、このように互いに相容れない見解が存在することを示すだけでは、日常生活の中で自然に英語を身につけるわけではないEFL環境に置かれた学習者を困惑させるにとどまる。この困惑を取り除くためには、教師の側で、直接目的語の受動化が好まれる(または好まれない)理由や、直接目的語の受動化の原則を示す必要がある。また、理由や原則を示すことはどの形式がより好ましいのかを考えるプロセスにも通じる。そのプロセスを通して文法を見出すことができれば、学習者はスピーキングやライティングの場面で直接目的語の受動化に関する知識を適切に運用し、適格な英文を生成できるようになると思われる。 本考察ではまず、先行研究に基づいて、意味的な制約という観点から受動態主語を観察し、次いで、統語的な制約と情報構造的な制約という観点から直接目的語が受動態主語として生起する可能性を観察する。本考察は結論として、二重目的語構文の直接目的語を受動化することを標準的とは考えず、それは直接目的語が定の名詞句であっても不定の名詞句であっても変わらないことを主張する。また、本考察の結果と英語教育との関わりについても述べる。 

 


自由研究発表  第1日 第3室 (1221教室) B

 

UG-based SLA研究と英語教育研究

横田 秀樹(岐阜医療科学大学)

これまで提案されてきた外国語指導法(例:Krashen 1985; Long 1981; Swain 1985; Duff 1986; Skehan 1996; Doughty & Long 2003)は、文法項目をほぼ一律に扱っていて、どのような種類の言語データをどのくらい与えれば,どのような知識の習得につながるのかといったことは未だ明確になっていない。英語教育の分野で,このような個別の質的な問題が議論されることは少ないが、第二言語習得研究(SLA)の視点から考えると、それぞれの文法項目によって指導方法を変えた方が自然だと考えられることが多い。つまり、どの文法項目にどの方法(新旧を含めた)が最適かということを考えるべきである。ところが、その基盤となるSLAは純粋には基礎研究分野の一つであり、「教育への応用」の問題は含まれていない(参照: ICoSLA HP; J-SLA HP)。そのため、示唆的な内容を除けば、SLA、特に本研究で扱う普遍文法に基づく第二言語習得(UG-based SLA)の言語教育への直接的応用研究はほぼ未開拓となっている。
 本研究の目的は、そのような研究を始めるにあたり、まず、UG-based SLAの英語教育への応用について言及した先行研究(Gregg 2001; 岡田 2004;白畑 2005 他)を再検討し、それらの中で扱われた「明示的指導」、「肯定的証拠」に対する否定的、肯定的考察を加える。 次に、最近のSLA研究(例:Haznedar & Schwartz 1997; Lardiere 2000; Tsimpli 2003; Hawkins 2005他)から得られる英語教育への示唆と応用の可能性について述べる。そして最後に、上述したように、SLA研究をどのように英語教育に応用するか、つまり直接的、間接的示唆を検証するという英語教育における研究分野の必要性を述べる。

 

 

自由研究発表  第1日 第3室 (1221教室) C

 

3人称単数を表す形態素 -s の誤用に見られる規則性

浦野 研(北海学園大学)

 主語と動詞の一致に関する規則は、日本人英語学習者がかなり早い段階で学習する文法項目である。にもかかわらず、この規則を常に正しく使用することは上級学習者にとっても難しく、表出時において3人称単数を表す屈折形態素 -s の使用をしばしば誤ってしまうことが知られている。その原因としては、一致に関する(暗示的)知識が欠落しているとする主張(Beck, 1997 など)と、一致の知識には問題がなく、表出の段階で形態素 -s をうまく付けられないことがあるという言語処理上の問題であるとする主張(Lardiere, 1998 など)があり、近年の研究から、後者の立場が優勢であると考えられている。
 一致の誤りを知識の欠如ではなく処理上の問題とする立場では、形態素 -s の脱落(主語が3人称単数のとき動詞に -s を正しく付けられない誤り)は見られても過剰使用(付けるべきでないときに -s を付けてしまう誤り)は見られないことが予測されるが、英語学習者の表出データを調査した先行研究(Ionin & Wexler, 2002; White, 2001)を見ると、脱落よりは少ないものの、過剰使用も数パーセントの割合で存在している。そこで本研究では、先行研究および日本人英語学習者の表出データを詳しく分析し、過剰使用がなぜ起こるのかを考察する。
 本研究の主な分析対象は、日本人英語学習者1,281名の発話データに基づいた NICT JLE Corpus(和泉・内元・井佐原, 2004)のうち、文法的・語彙的誤りがコード化された167名分のデータである。一致に関する全347の誤りのうち88件が過剰使用であり、その大半(76件)は主語が3人称複数の場合であった。このことから、日本人英語学習者は人称の知識は正しく持っているものの数(単数・複数)に関する知識が欠落している可能性を指摘し、先行研究との比較も交えて報告する。

 

 

自由研究発表  第1日 第4室 (1231教室) @

 

小学校英語活動における留学生との交流活動−国際理解教育の観点から

東 悦子(和歌山大学)

小学校学習指導要領(平成1012月告示、1512月一部改正)には、「国際理解に関する学習の一環としての外国語会話等を行うときは,学校の実態等に応じ,児童が外国語に触れたり,外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習が行われるようにすること。(第1章総則、第3(5))」とある。
 小学校の英語活動において、「国際理解」教育の観点から、上述の小学校段階にふさわしい体験的な学習を行なうための一つの方法として、地域で学ぶ留学生との交流活動が挙げられよう。
 本発表では、留学生によるボランティア・国際交流活動をコーディネートしている立場から、総合的な学習の時間等を利用しての児童と留学生との交流活動の実践事例を取り上げ、1)コーディネートの方法や2)交流活動の実際を紹介し、小学校の英語活動に携わる様々な方々と活動事例を共有し、「児童が外国語に触れたり,外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習」を実践するための交流活動について、より良いアイデアを検討したい。さらに、3)交流活動の支援や観察、4)児童や留学生の感想の分析を通して、小学校の英語活動が、英語のスキル面の習得においてのみならず、国際理解教育の観点から、どのような意義を担うものであるかを検討したい。

 

 

自由研究発表  第1日 第4室 (1231教室) A

 

From the Festival to the Classroom  [in English]

Brian Mahoney(亀山市小学校英語講師)

For the past four and half years, I have been actively engaged in teaching the English language to elementary school children in Seki town and Kameyama city. Currently, I teach in four elementary schools, working directly with over 500 students and dozens of homeroom teachers.

In addition to my work in the schools, I have spent a great deal of time outside of the classroom as a member of Seki town’s festival group. My participation in Seki’s festival group, and through my development as a flute player, has given me great joy as well as helped me become a more effective teacher in the classroom.

Beginning again, as a student learning the flute and the history of the festival, has provided me with a wonderful opportunity to better understand the challenges that my young learners face in the English classroom. That the key to greater understanding of what one is learning is not specifically tied to one process or technique but rather to a combination of factors that are necessary for progress. In other words, students must be given an environment which not only involves some form of memorization but also one that fosters the internalization of the experience.

Bringing this philosophy and approach to the English classroom has been a great challenge of mine. It has motivated me to create a more coherent and connected curriculum focusing on short and long- term project learning. And this in turn has given me better success when working with individual students or classes of students who lack interest or motivation in the English classroom. What is vital for children is to see that the intended action has not only a purpose but an understandable goal as well.

I hope to have the opportunity to explain my experiences and results in greater detail at the CELES conference. Thank you very much. 

 

 

自由研究発表  第1日 第4室 (1231教室) B

 

小学校における「英語活動」が中学校1年生の聴解力に及ぼす影響

石浜 博之(上越教育大学)

1.調査の背景: 糸魚川市立西海小学校では、平成17年度から「総合的な学習の時間」に英語活動を導入した。実施時間は年間35時間を目標として、全学年で英語活動を積極的に推進した。更に、学級担任が中心となって英語活動の授業ができるように実践を積み重ねていくねらいもある。実際に、学級担任と石浜が協議してカリキュラムも積み上げて編成し、そのカリキュラムに基づいて英語活動の授業を展開した。そして、現在に至っている。
 本発表では、中学校において、英語活動経験した生徒とそうでない生徒との間に聴解力に相違があるかについて報告する。

2.調査の目的と内容: カリキュラムに基づいて英語活動の授業を年間35時間ぐらい実施すれば、児童の聴解力の向上が期待できるだろうと発表した(小学校英語教育学会自由研究発表、平成18年7月発表)。調査の目的は、その35時間の英語活動を経験した生徒(西海小学校卒業の生徒)、中学入学以前に学習経験のある生徒、及び英語学習経験のない生徒の間に、「聴解力」に関して相違はあるのか、即ち、中学校入学以前において英語学習経験(英語活動経験も含む)の有無が聴解力に影響を及ぼしているかについて検証することにある。
 調査時期は、平成186月実施にした。その調査紙は、児童英検2級模擬試験を使用し、その問題の一部に「わからない」項目を入れて作成した。被験者は185名である。処理の方法は、一元配置の分散分析で実施した。
3.結果: 中学校入学以前に英語学習経験のある生徒(西海小学校で英語活動を経験した生徒・その他のEx)は、学習経験のない生徒(その他のNon-Ex)よりも聴解力調査においてよいという結果が得られた。即ち、学習経験が聴解力に影響を及ぼしている。
問題分析を含めた分析結果の詳細は、発表当日に提示したい。
 中村彰伸著.(1995).CDつき児童英検クリアもんだいしゅう』東京:成美堂出版.

 

 

自由研究発表  第1日 第4室 (1231教室) C

 

児童の発話に対するSkill Getting Skill Using Activity

高橋 美由紀(愛知教育大学)

  小学校英語活動は、「言語習得を主な目的とするのではなく、興味・関心や意欲の育成をねらうことが重要である」(文部科学省2001:3)と言及されている。しかし、児童の英語に対する興味・関心や意欲の育成には、英語コミュニケーション能力が必要であり、その能力を育成するためには、スキル面についての指導がなければ困難であると思われる。
 
本発表では、英語コミュニケーション能力を養成することが、児童が英語に対する興味・関心や意欲の育成につながるということから、Rivers and Temperley1978)やHarmer2002)のSkill Getting and Skill Using Activityモデルを使用した事例研究を基にして、その有効性について児童の発話に焦点をあてて分析を行い、Skill Getting and Skill Using Activityが英語活動にもたらす効果について考察する。
 具体的には、第一に、Skill Getting ActivitySkill Using Activityについての理論から、その理論を使用した小学校英語での活動について述べる。第二に、事例研究として、N小学校6年生が行った以下の活動、(1)Skill Getting Activity」として、授業で学習した内容や練習について、(2)Skill Getting Activity」として、「修学旅行先で出会った外国人に話しかけた活動」や、さらに、「修学旅行でコミュニケーション図った外国人について、他の人に発表した活動」について紹介する。第三に、児童に英語活動の最後に実施した「話すことに対する態度と英語への関心度」、「ALTとの会話によるスピーキングテスト」の結果から、Skill Getting and Skill Using Activityの有効性について分析を行い、小学校英語活動にもたらす効果についても考察する。

 


自由研究発表  第1日 第5室 (1301教室) @

 

スキルアップをめざす英語自習教材の開発

鈴木 基伸(豊田工業高等専門学校)

 本発表者の勤務する工業高等専門学校は、「実践的な技術の学習を重要視し、工学理論を実際面に生かす能力をもった技術者を育成することを目的」とする学校であり、この理念はカリキュラムにも色濃く反映されている。学年を追うに従って、工学系の専門科目が占める比重が高くなり、英語の授業の比重は相対的に低くなる。英語検定のレベルでは、おおよその学生が準2級レベルにとどまり、2級レベル以上に到達する学生の数が上級生になっても増えていかないのが実状である。潜在的には英語力を伸張させる可能性を持った学生が多くいると思われるのに、上級学年になって英語力の伸長が頭打ちになるのは、一つは上記の理由で英語に接する時間が少ないことが理由に挙げられる。
 このような現状を打破し、学生のスキルアップをはかることを目指して、本発表者は以下のような実践を行った。
   (1) 授業内活動をできるだけ英語の4技能を有機的に関連付けたものにする。
   (2) 授業後に上記の活動を再体験できる自習教材を学生に提供する。
いわば「授業内活動の自習教材化」によって、専門科目の実習・学習に日々追われる学生にlearner-friendlyeasily accessibleな英語学習のコンテンツを提供し、学習者の英語技能の向上を図ろうとするのが本実践の目的である。
 本発表では、まず「本発表者の勤務校における英語授業と学生の英語力の実態」と「本発表者の授業内活動」を概説した後、「授業内活動を再体験する自習教材」の実例を紹介したい。フロアの先生方からのご助言、ご意見を頂戴できれば幸いである。

 

 

自由研究発表  第1日 第5室 (1301教室) A

 

英語を学習する意味が見いだせない学習者のための自律学習の開発方法(1)

東郷 多津(京都ノートルダム女子大学 言語学習センター)

 高等教育段階での英語へのニーズが高まり、その必要性も多様化しているが、大学の教養教育としての英語の授業の役割が疑問視されている。一部の大学生は将来属したいと思う社会のニーズを予想して自己の能力開発に研鑽しているが、大多数の学生は基本的な知識は習得しているものの、将来自分の帰属したい社会が未確定のまま、中等教育の延長のような心構えで授業を受けている。さらに大学入試の多様化により、基本的な英語の知識を習得していない大学生も少なくない。近年、彼らの存在が大学教育で問題になっていて、入学前教育やリメディアル教育としてプログラム化されている。このような学生は概して授業に対するモチベーションが低いにもかかわらず、優秀な学生も出席しているなど,多様な学生が混在するクラスが多い。このような英語クラスでWritingの教育を行うことはきわめて困難である。しかしながら、われわれの大学ではこのような実態にあるが具体的な英語教育プログラムの改変をせず、従来通りの英語の授業を1,2年次に提供し続けている。特にリベラルアーツ系の大学で教える教師として、英語を学習する意味を見いだせない学習者に対応することは避けて通れない課題である。そこで、多様な知識や動機を持つ他の学習者の中にあってもこのような学習者が自律学習できる授業を目指して、他大学の教員と共にプロジェクトチームを組織して教材開発を行っている。
 英語を学習する意味が見いだせない学習者は、英語嫌い、基礎学力がない、コミュニケーション力が低い等の問題を抱えていることは明らかであるが、その問題を教師が的確に推察することはできない。学習者の意識を推察しながら授業の開発を行っているが,学習する意味を見出せない理由とその対応は個別的であるので、指導概念をモデル化し、データを質的研究の方法を適用し解釈する方法を採用している。本発表ではその枠組みを紹介する。

 


自由研究発表  第1日 第5室 (1301教室) B

 

Intellectual Emancipation in the EFL Classroom  [in English]

 

Sak Taras (三重大学)

Jacques Rancire's Le maitre ignorant (1987; translated as The Ignorant Schoolmaster) recounts the story of Joseph Jacotot, a lecturer in French Literature forced into exile by the Restoration of the Bourbons, who found himself a guest of the King of the Netherlands, teaching students who knew no French, without himself understanding their language (Flemish).  As a result of these unique circumstances, Jacotot caused a scandal in the Holland and France of the 1830s by demonstrating through his experience that "knowledge" was not necessary to teach, nor "explication" necessary to learn.  He called this experiment in education "intellectual emancipation," and his radical ideas spread panic throughout pedagogical circles in his day.  Rancire exhumed the extraordinary life and untimely lesson of Jacotot in the midst of an intense debate, raging in 1980s France, on the purpose and aims of education----one that continues today, extending far beyond the borders of Europe and touching upon crucial questions concerning immigration, class, race and inequality.  In my presentation, I will first attempt to summarize the "lessons" of Jacotot's "intellectual adventure" and, second, describe what is at stake for Rancire in resurrecting this curious figure and meditating upon his contemporary relevance.  I will end with a discussion of how I draw upon Jacotot/Rancire in my own teaching: specifically, using journal writing and authentic materials to foster learner autonomy and intellectual emancipation.

 


自由研究発表  第1日 第5室 (1301教室) C

 

Can-do リストのパイロット調査

小山 由紀江(名古屋工業大学)

1.背景
Can-do
リストは言語能力を自己評価する指標として、近年注目を集めているが、その代表的なものがCEFR (2001)に詳述されているCommon Reference Levelの能力記述文である。わが国でも近年CEFRの動きを受けて、言語学習者が適切に自己の言語能力を把握するためのcan-doリストに関する研究が始まっている。根岸(2005)は英語のWriting 能力のcan-doリストの自己評価と実際のパフォーマンスを比較し妥当性を検証し、長沼・宮嶋(2006)は到達段階の参照基準としてcan-doリストを用いた調査を行った。
2.目的
1)「名工大can-doリスト」(パイロット調査)の回答結果と、TOEICの結果を比較分析し、回答傾向を明らかにすること。
2)「名工大can-doリスト」の内容や実施方法に関して改善すべき点を明らかにすること。
3.調査の実施と結果
調査の対象:2006年度の1年生266人。全体的な結果は以下の通りである。
1)can-do リスト調査とTOEICの結果との相関は低い。
2)reading, listening というpassive なスキルについての自己評価が比較的高く、speaking , writing というproductive なスキルについての自己評価は低い。
3)interactive スキルに対する自己評価は1.96 と5分野のうち最も低い。
) 5分野全てを通して自己評価が低いのは、専門性・抽象性の高いもの、negotiationや問題解決が必要とされる項目である。
4.まとめ
「名工大can-do リスト」について今後改善すべき点
1)項目数の削減
2)内容:カリキュラムのコース目標との一致
3)実施時期:TOEICテストとの時期の一致
Can-do
リストの評価に関しては、外部語学試験との関連付け等、検討すべき課題は多い。しかし語学教育のカリキュラム決定や教科書・試験の作成に、学習者の能力評価と目標設定のための基準作りは必須であり、can-doリストの果たす役割は極めて重要である。その意味でも、より妥当性・信頼性の高いcan-do リストを作成し実施することは、英語教育の成功の一つの鍵であろう。

 


自由研究発表  第1日 第6室 (1321教室) @

 

自己決定理論に基づく小学生英語学習者の動機づけの変化について

堀江 美紀(名古屋学院大学大学院生)

本研究の目的は日本の小学生の英語学習者の動機づけが1学期間を通してどのように変化し、また動機づけが高まる上で自己決定理論における3つの心理的欲求(有能性・自律性・関係性)がどう影響しているのかについて調査することである。また最後にどのような活動によってやる気になったのかを具体的に自由記述式で回答してもらい検証する。
 実際の教室活動を考える上で、学習者の動機づけが何によって高められているかを明らかにすることは教育者にとって重要であることは従来からしばしば指摘されている。この指摘に対して心理学における動機づけ理論の一つとして、自己決定理論(Deci & Ryan, 1985, 2002)が注目されている。このことを検証することで教育活動を改善する有益な視点が提供でき、心理面での小学校英語活動が目指すべき道が提供できるのではないかと考える。
そこで本研究では日本の公立小学校に通う4、5、6年生に対して一学期の初めと終わりに質問紙を用いて児童の3つに心理的欲求がどう動機づけに影響を与え、変化をしているのかを調査する。また授業の最終日には、どのような活動が動機づけの変化に影響を与えたのかを探る為自由記述式調査を行い検証する。被験者は2週間に一回総合的学習活動の枠組みで筆者の英語活動の授業を受けている。質問紙の項目は廣森(2006)で使用された英語学習に対する心理的欲求尺度・英語学習に対する動機づけ尺度(5件法)を小学生用に筆者が改訂したものである。
 本発表では4月に行われた質問紙調査の結果と考察の報告を行いたいと考える。

 

 

自由研究発表  第1日 第6室 (1321教室) A

 

初期英語学習者の動機付けおよびその変化

安達 理恵(名古屋外国語大学非常勤)

日本の小学校英語学習者の動機づけに関する研究において、Carreira(2006)では、小学3年生と6年生の内発的動機づけ、外発的動機づけを調査し、両者ともに年齢とともに減少したという結果を示した。一方、國本(2006)では、小学4年生と5年生の動機づけの変化と要因について調査し、学年による動機づけの変化はなかったという結果を示している。筆者は、安達理恵(1997) において、小学生4年生と6年生計592人を対象に早期英語学習者と非学習者の学習動機(動機づけに関してはGardner1985)の道具的志向と統合的志向を参考に作成)、学習意欲、異文化意識の違いなどを中心に調べ、またその調査の2年後、中学2年生562人を対象に同様の調査を行った。前回の調査においては、早期英語学習者と非学習者の違いをみることを目的に調査・分析を行ったものであるが、今回は、このデータを利用して、学年による動機づけの変化とその動機因子の変化、さらに小学生と中学生の英語学習に対する動機づけの変化、および動機付けと学習意欲の関係との関連を調べることを目標とするものである。おおよその結果は、以下のような点である。
@小学生4年生と6年生(英語学習経験有同士で比較)の動機については、Carreira(2006)と同じく、6年生の方が減少していた。
A一方、小学6年生と中学2年生ではほとんど差がみられなかった。
B動機に関する因子の数は、國本(2006)と同じく、小学生は少なかった。
C動機付けと学習意欲の関係については、小学生の方がより強い影響があった。
 今回は、データがやや古いものであることに問題はあるが、先行研究の結果も踏まえて考察し、初期英語学習者の動機づけの変化とその要因についてより明らかになったと言える。

 

 

自由研究発表  第1日 第6室 (1321教室) B

 

小学校における学校間国際交流と、英語活動や他の教科等との関わりについて

 

林 佳織(三重県津市立安東小学校)

学校間国際交流───。小学校の子供にとっても教師にとっても、わくわくドキドキする活動である。しかも、英語の習得にも何らかの効果がありそうである。
 
学校間国際交流は、小学校の子供達にとって、どんな意義があるのだろうか。また、英語の習得に関する具体的な影響や効果としては、どんな点が挙げられるのだろうか。米国の小学3年生との6年間に及ぶ国際交流活動を紹介しつつ、それらの交流活動と小学校英語活動や他の教科等との関連を述べる。
1.学校間国際交流の内容
  インターネットの利用。写真や図画作品等の交換を通して。
2.他教科等との関連
  活動時間の工夫。自己認識・自尊感情の形成について。
3.英語活動との関連
  ロールプレイではない英語表現の機会。学校内外の英語イベント参加の効果。
4.英語学習への意欲
  文字表現への興味。授業時間外の学習への波及効果。
5.学校体制の変化
  英語学習環境の充実。全学年年間30単位時間のALTとの英語活動。
6.課題
   
活動時間と活動人員の確保。

 

 

自由研究発表  第1日 第6室 (1321教室) C

 

小学校英語活動が,その後の英語学習に及ぼす表現および語彙における理解度と記憶の定着度の差異

福智 佳代子(姫路獨協大学非常勤)

  現在日本では、全国の公立小学校のうち,93.6パーセントの小学校が「国際理解に関する学習の一環としての外国語会話等」あるいは特別活動等でおこなわれている。文部科学省指定の研究開発学校や構造改革特別区域研究開発学校において,教科として英語教育を実施している公立小学校も増えつつある。しかしながら、研究開発校と総合の時間で英語活動を行っている小学校とでは,その活動の内容や授業時間数には,相当の差がある。実際,研究開発校で小学校英語活動を経験している小学生と経験していない小学校の児童には,どの程度,どんな部分に差が現れるのか、測定可能な規準テストを用いて、比較調査を行った。

 


自由研究発表  第1日 第7室 (183教室) @

 

(キャンセル)

 

中国人留学生初級英語クラスにおける質的リサーチ

千田 誠二(和光大学表現学部)

 近年、国内の大学で多くの中国人留学生が学んでいる。留学生の中には、日本の大学に入るまでまったく、あるいはほとんど英語を習ったことがない者も少なくない。日本語に次ぐいわば第二外国語である英語を留学生らはどのように学んだのか、紙面インタビュー、学習ノート、e-mailを通して学習プロセスを分析した。研究方法としてはStrauss and Corbin(1944, 1998) grounded theory methodologyを使用し、英語学習への態度、ストラテジー、動機づけの3つの点に焦点を当て、質的リサーチを行った。

 

 

 

自由研究発表  第1日 第7室 (183教室) A

 

多重知能理論の視点から見た中学校英語教育の動機づけ ―英語の授業における英語使用の必要性について―

二五 義博(県立広島大学非常勤講師)

 ハーバード大学のハワード・ガードナー教授(1983;1999)によれば、人間には少なくとも8つの知能が存在すると言われている。この多重知能理論は、文部科学省の掲げる「コミュニケーション能力の育成」と符合する形で、日本の中学校の英語教育に応用することが可能である。すなわち、言葉や身体、イメージを利用したり(言語的、身体運動的、視覚・空間的知能)、論理性や相手の気持ちの理解に焦点を当てたりしながら(論理・数学的、対人的知能)、コミュニケーション能力の向上を図ることができる。こうした多様な知能を生かした英語指導法に必要不可欠なのは、英語の授業でいかに英語の使用場面を増やしていくかである。また、英語の授業をできるだけ英語で行うことは、特に中学校の初級段階での学習者にとっては、英語学習に対する高い動機づけにもつながるものと考えられる。
 そこで本研究の目的は、多重知能理論に基づくコミュニケーションを重視した指導法が、英語学習に対する学習者の動機づけにいかなる影響を及ぼすかを明らかにすることである。研究方法としては、広島県内の中学校1年生を対象とした、英語の授業を100%英語で行う私立中(139人)と3050%程度を英語で行う公立中(170人)でアンケート調査を実施し、両者の比較検討を通して英語使用度と動機づけの関連性を考察する。加えて、私立中での英語および英語で行われる他教科の授業観察を参考に、高い動機づけに結び付く要因を多重知能理論の側面から具体的に探る。
 本調査の結果として、従来の英語という教科の枠組みでは学習者の英語に対する動機づけの面で限界があることを指摘したい。私立中の事例からクロスカリキュラム的内容重視の視点を取り入れた指導法が、動機づけのみならず、コミュニケーション能力育成の視点からいかに重要であるかの示唆を行うこととする。

 

 


自由研究発表  第1日 第7室 (183教室) B

 

韓国と日本の大学生の英語力・英語学習動機・学習行動の関係

佐藤 夏子(東北工業大学)

 様々な場面で比較の対象とされることが多い韓国とわが国であるが、英語教育については類似している点も、大きく異なっている点もある。まず、類似している点としては、大学入試のための受験英語が存在していることである。また、TOEICの受験者が多く、受験者の大半は韓国人と日本人と言われている。 異なっている点としては、韓国では、現在英語熱が白熱しており、小学生が母親同行で海外留学するケースも珍しくないそうで、英語教育への情熱は日本の比ではない。さらに、今韓国では「英語村」が人気である。英語村の、公用語はもちろん英語で、道を聞いたりレストランでオーダーしたりといったことはもちろん、銀行口座を開いたり病院に通ったりするなど、生活のすべてを英語で行っている。2007年5月現在、英語村の数は8つであるが、計画中が13村あるといわれている。また、韓国では2001年から開始された「第7次教育課程」により小学校3年から英語が必修科目として教えられており、現在は一部の実験校で1年生から英語教育を行っているが、2008年からは、すべての学年で英語が教えられるようになる。日本でも、小学校5年生開始の英語教育の必修化が近いとされているが、これは韓国の影響もあるといわれている。
 このような英語教育を受けてきた韓国の大学生は、日本の大学生と比較すると英語力がついているのだろうか。また、韓国の大学生の持つ英語の学習動機や、具体的な学習行動は日本の大学生のそれらと異なっているのだろうか。本研究の目的は、韓国と日本の大学生に対して行った調査票の分析結果と、英語試験の結果を比較して、両国の大学生の英語力、学習行動、動機付けの実態を知るものである。

 

 

 

自由研究発表  第1日 第7室 (183教室) C

 

短期留学が日本人大学生学習者に与える影響 -コミュニケーション行動(WTC)と情動要因の変化を分析する-                                                 

中平 里実(名古屋学院大学大学院生)

本研究は、短期留学が、異なった海外経験を持つ日本人(大学生)英語学習者に及ぼす影響を調査することを目的としている。影響を受ける変数として、コミュニケーションをしたいと思う気持ち(willingness to communicate)、英語を使うことへの不安、自信、動機付け、国際的思考(international posture, Yashima, et al., p. 125)を設定した。過去の海外経験が異文化適応に良い影響を与えるという先行研究(例:Yashima, 1999)の結果に基づき、本研究では、被験者を1週間以上の海外滞在経験があるグループ(平均年齢=19.5才、男3人、女1人)とそれ以外のグループ(平均年齢=19.6才、男5人、女2人)に分けた。両グループは、20068月から7週間カナダの大学でのESLプログラムに参加した。上記変数の留学前後の変化は、Yahima, et al.(2004)が使用したアンケートの改訂版で測定した。又、英語リスニング力の変化を、Harris & Palmer(1986)Comprehensive English Test for Learners of Englishで測定した。さらに、これらの量的データの変化を補完するものとして、アンケート実施直後に、各人約20分程度の半構造的インタビューを実施した。留学前のインタビューでは、アンケート各問に対する被験者の答えの背景や理由を尋ね、留学後には同じアンケートの質問に対する被験者の答えの変化の理由等を聞いた。結果は以下の通りである。7週間の短期留学の結果、1)Yashima(1999)の結果と同じく、過去の海外経験の有無が各要因に顕著な影響を与えた。2)グループ内の量的変数の変化は、海外経験のある被験者により顕著な変化が見られた。3)海外経験のないグループは、アンケートの結果とインタビューの内容に食い違いが見られた。

 


自由研究発表  第1日 第8室 (280教室) @

 

中学生の英語読書量と英語の学力伸長に関する一考察

矢野 淳(静岡大学 教育学部 英語教育講座)

 この実践研究のきっかけは,中学生の英語に対する取り組みについて附属中学校英語科教諭との議論から生まれた.すなわち,ある程度英語の高い学力をもつ学習者でさえも,英語長文に対する「アレルギー」を訴えるとのことであった.また,海外帰国子女の保護者の中には,滞在中に身につけた英語力のうち,特に読解に関してその力が低下するのではと懸念する声が少なくないという. 
 平成七年版のNew Horizon(東京書籍)の中学校三年間分の本文のみの語数は6756語*というデータがある.教育課程が変わり,現行版の語数はさらに減少していると推測するが,過去五年間の静岡県立高校入試の英語科問題について,その単語数を,放送による聴解問題のシナリオ中の語数を含めて数えると,平均して1350語ほどであった.作文等にあてる時間も考慮する必要はあるが,単純に計算すると,中学三年間分の教科書本文の2025%の語数の英語に,受検者は50分間で取り組むことになる.英文読書量を増やし,長文に対する「アレルギー」を克服し,高校側が求めるこの語数に十分対応できる英語の学力を保証する目的で,教科書に加えて,英文多読プログラムを附属中学校に導入した.中学生の英語読書量と英語の学力伸長の関係を,中学二年生から中学卒業までのデータを調査中で,本発表ではその途中経過を報告する.
 使用教材は,二つ折のカード一枚につき様々なテーマの長文が一つずつ載っているものを採用し,各カードにはその長文の語数が明記してある.指示された期日までに累計何千語読んだかを生徒は自己申告し,英語の学力の伸びについては,中学校における公式テスト,TOEIC Bridgeテスト等の結果を追跡中である.
*現代英語教育編集部,1996,「英語教育 分量の研究」,『現代英語教育』,研究社出版,pp.3336

 

 

 

自由研究発表  第1日 第8室 (280教室) A

 

個人差を考慮し、自律学習を促すリーディングの授業 −SRA教材を用いた試み−

木 亜希子(大阪教育大学)

 フランス語専攻の大学2年生を対象に、学生の個人差を考慮し、自律学習を促した1年間の英語リーディング授業の実践報告である。学習記録や学生によるアンケート結果等に基づき、SRA教材を用いた授業の利点と課題について報告する。
 従来の統一教科書を用いた一斉授業では、学習者の個人差に対応し、自律学習を促すことは難しい。本授業では、個人の英語リーディングレベル、興味・関心に応じて教材を読み進められるように、SRA教材を用いた授業を行った。また、適宜全体授業を取り入れ、スキミング、スキャニングなどのリーディングストラテジーを学んでもらったり、英語学習への意欲を高める活動を行った。課外学習として、各自が、前期はGraded Readersから好きなタイトルを選んで読み、後期は自由な英語学習教材を選んで学習することで、学習者の英語学習に対する自律を促した。SRAリーディングラボ(SRA Reading Laboratories)は、アメリカで開発され、幼児から一般成人を対象に、世界中の学習者によって使用されているリーディング教材である。教材はPower Builders Rate Buildersで構成されている。Power Buildersは、学習者が自分にあったレベルのリーディングカードを選び、文章を読んで、その文章に関する2種類の練習問題に答えていくものでSRAの核となる教材である。学習者は、全ての問題を解き終わると各自で答え合わせをする。Rate Buildersは 速読力養成をねらいとした練習教材で、授業時間内にクラス全員一斉に時間を計って取り組む教材である。
 一年間授業を行った結果、各学生が自分のペースで学習を進めることができ、学習者の興味、関心を喚起すること、学習者に選択を与えること、学習者が学習を記録し管理することで自律学習が促され、概ね学生からは良い評価が得られたが、課題も明らかになった。

 


自由研究発表  第1日 第8室 (280教室) B

 

将来TOEIC受験を視野に入れた高等学校Reading授業への一提案

 

三岩 晶子(和歌山県立日高高等学校)

 2003年の文部科学省により公表された「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」の中で英語教師の英語力の数値目標の1つとして、TOEICスコアが引き合いに出されたが、ここ数年の一般社会におけるTOEIC受験者数は急速に増加している。生徒は高校卒業時までは、上級学校進学への優遇条件として、主に実用英検の合格を目指すが、卒業後はTOEIC受験も加わり、後者の試験に重点が移っていくようだ。筆者は本研究大会の2006年度の問題別討論会に於いて、「英語教員も自己研鑽としてTOEICに挑戦すべきである。また広く社会でTOEICの受験が重視される傾向が進む以上、生徒の将来の受験の必要性を想定して、高等学校授業において、試験に対する予備的指導をすることが望ましい。」と結んだ。
 
本研究の目的は、高校生が将来TOEIC受験をする可能性を視野に入れた指導に関して提言することである。特に本研究では、一般的に高等学校の3年次に履修されるReading授業に着目し、TOEICReading Sectionへの導入的指導の可能性を探る。研究手順は以下の通りである。TOEICReading Sectionの特徴をまとめ、高等学校 Reading 授業の実態および、教科書分析を基にして考察し、授業への提案を行う。

 

 

 

自由研究発表  第1日 第8室 (280教室) C

 

リーディング指導における教材解釈のあり方について

 

田中 武夫(山梨大学)

 高校における教科書には、実に多様な、ときには、深い内容のテキストが数多く盛り込まれている。それらをどのように取り扱うかはすべて教師に任されており、一般的には、新出の語彙や文法などの習熟を中心に、本文の内容を理解させる形でリーディング指導が行われている。これまで発表者が携わってきた高校の研究授業や研修会での経験から、教師の共通した課題の一つとして、教科書本文をどのように扱って豊かな指導を行っていくかというリーディング指導のあり方があげられる。多様で豊かな題材をもつ教材を、表面的な内容理解の確認で終わらせず、限られた時間の中で、いかに生徒の深い理解と思考を促す、魅力的な指導ができるかという課題である。本発表では、このリーディング指導のあり方を考える一つの糸口として、教師による教材解釈に焦点を当てる。教師による教材解釈の仕方が、指導のあり方を決定する可能性があると考えるからである。そこで、本発表では、教科書を使ったリーディング指導において、教師がどのように教材解釈をすることが可能であるかを整理することを目的とする。ここでいう、教材解釈とは、教科書の本文を媒介に、生徒に学習させようとする内容を明確にし、生徒の反応を予想しながら、授業展開や発問を媒介にどのように教えるかを考えることである。本発表では、教科書のテキストの捉え方として、(1) メッセージ(主題)を中心にテキストを捉える、(2) テキストタイプからテキストを捉える、(3) 生徒の読みを深めるポイントからテキストを捉える、の3つを提示し、生徒の豊かな読みを促すリーディング指導を考えることにしたい。

 


自由研究発表  第1日 第9室 (281教室) @

 

音読トレーニング効果の再検証

 

浅野 敏朗(明治鍼灸大学)

音読が昨今見直されているが、高等学校レベル以降の英語教育においては、まだまだ音読指導は主流にあるとは言えないだろう。本稿は、浅野(2004, 2005)等を継承し、音読指導の可能性を探ろうとするものである。本研究の目的は、実験群と対照群を設定して、一定期間音読トレーニングを行った結果、音読メタ認知力はどのように変容するのか、また音声を伴う速読力は向上するのかどうか検証することにある。
音読トレーニングの前後で、実験群において、「音読に関する認識調査」50項目中7項目について有意な変化が見られ、統制群においては、50項目中2項目について有意な変化が見られたにとどまった。両群に差はあるものの、浅野(20042005)と比較して、質問項目の回答にあまり有意差が確認されず、音読トレーニングの効果は十分に認めることができなかった。
 音読トレーニングの前後二回、音声を伴う速読テストを実施したが、両群において、速読テストのWords Per Minute(一分間に読めた語数、以下、WPM)とReading Efficiency(以下、RE)の平均値には、二回の速読テストに関して有意差が確認され、2回目の速読テストの方が成績は良かったが、音読トレーニングを実施してきた実験群の方が、成績の向上を示す2回のテストのWPMREの差において、統制群のそれよりも下回り、音読トレーニングの効果を実証することはできなかった。
浅野敏朗(2004)「音読指導を検証する:授業実践に基づく予備的研究」『LET 関西支部研究収録』 第10号  33-44
浅野敏朗(2005)「音読指導再検証:予備調査」『中部地区英語教育学会紀要』 第35号 123-130

 

 

自由研究発表  第1日 第9室 (281教室) A

 

レシテーションは学習者に何をインプットするのか

 

荻原 洋(富山大学)

レシテーションにはいくつかのヴァリエーションがあり、それぞれ期待される学習効果が異なると思われる。本発表では、キーワード・レシテーションを取り上げ、その効果と学習者要因との関係を探る。
 キーワード・レシテーションでは、キーワードを教師が指定する場合が多いと思われるが、学習者自身に決めさせるといくつかのパターンが現れる。そのパターンは、品詞に関する選択、語の連続に関する選択、談話の構成に関する選択など様々な要因が絡み合って生じていると思われるが、学習者の英語力がこれらの選択に大きな影響を与えているということは十分に考えられるであろう。レシテーションを行うことにより、学習者は大量のインプットを自らに与えることになるが、キーワードの選び方により、そのインプットの性質はかなり異なっていることが予想される。果たして学習者はどのようなインプットを自らに与え続けているのか、それは望ましいインプットとなっているのかどうか、教師がキーワードを選ぶ場合とどう違うのか、などについて、実際に行なわれた記録(大学1年生約80名による)をもとに、あれこれと考えてみたい。

 


自由研究発表  第1日 第9室 (281教室) B

 

自己音声の確認がもたらす発音・音読トレーニングの効果について

田中 裕実(富士常葉大学非常勤講師)

 近年、國弘(2003)などの反復音読練習があらためて注目を集めており、また松澤(2004)なども正確な発音を学びそれを繰り返す量が学習成果を大きく左右すると述べている。その反復トレーニングの重要さが見直されていることの表れの一つに、CALL教室を使った授業の増加があげられる。しかし未だそういった施設のない学校の方が多いのが現状である。
 
本研究の目的は、日本人英語学習者のリスニング力を向上させる手段の一つとして考えられる発音・音読の反復練習に着目し、授業時間内での効果的かつ効率的な方法を探るための調査を行うことである。また普通教室でも実現可能な方法や録音媒体を検討していく。ここでは、発音・音読トレーニングをする際、各自が音声を録音しそれを確認(モニタリング)する作業過程を与えることによって、その後のトレーニングにどのような効果がもたらされるかを見ていく。学習者がモニタリングした際、自分の弱点に早期に気づくことが出来れば、正しい発音により早く近づくことができる可能性が考えられる。また授業者は授業時間を有効利用した反復練習活動の場を提供できることになる。
 
調査は日本人の学生を対象としている。まず全員にCDの音声を聞かせ、授業者による説明を加えながら一斉練習をし、一度各自の音声を録音する。その後、その半数を統制群(Aクラス)として、学生間のペアワークによる、他者からの助言を反映させるトレーニングを実施する。そして残りを実験群(Bクラス)として、自分の音声をモニタリングさせた後トレーニングをさらに追加する手法をとる。終了後両群ともに二度目の録音を実施するという過程で、現在追跡中である。

 

 

自由研究発表  第1日 第9室 (281教室) C

 

Communicative Language Teachingにおける”Prediction要素”の活用とその効用

林 敬泰(三重大学教育学部附属中学校)

平成16年度文部科学省教職員海外派遣研修にてイギリス・エクセター王立大学English Language Centerで半年間、英語実践教育プログラムを受講した。帰国後、その指導方法を基に三重大学附属中学校で2年間、授業実践を行ってきた。昨年度は少人数学級(2年生20名×8クラス)において、教科書と平行しオックスフォード出版の英会話教材「Person to Person: beginners」を活用し、Communicative Language Teaching(以下CLT)の指導を行ってきた。この教材を通して、プロセスを重視する指導の中でも「Prediction要素」に重点を置いた指導をしてきた。このレポートでは、CLTと「Prediction要素」の概要を説明し、指導方法とその効用について考える。イギリスにおける英語指導方法は、CLTに基づいており、“Communication is a process.”という概念が言語指導の大きな柱になっている。CLTでは、教える過程や学習の過程自体がコミュニカティヴであることが重要であり、「Prediction要素」はプロセスの中の柱である。 人がコミュニケーションを行う場合、常に相手や会話の場面・状況等を把握し、次にくる会話の内容を予測・予想した上で発話を行っている。この予測・予想するプロセスをCLTでは、「Prediction要素」と呼んでいる。例として、次のような発話を紹介する。相手が野球好きなのかどうかを予測・予想した上で「Wow, Matsuzaka at last pitched 1000 strikes!」と発話し、相手が東海岸出身者か予測・予想した上で次にくる会話を発話する。このような、実際のコミュニケーションのプロセスで行われているPrediction要素を、英語指導の中にも取り入れる方法とその効用を紹介する。

 

シンポジウム    15:35 18:00  (190教室)

 

自律学習者をどう育てるか   

 

司 会 者: 大下 邦幸(福井大学)

早瀬 光秋(三重大学)

パネリスト: 竹内 理(関西大学)

亀山 太一(岐阜工業高等専門学校)

城野 博志(三重県立四日市南高等学校)

 

 

[主旨説明]                     

教師の役割が「学習者に教えること」から「学習者を手助けすること」に変わりつつあると言われる今日,学習者のそれも「教師から(ほとんど一方的に)教わること」から「自分の学習を管理・実践すること」に変わってきています。その理由として次のようなものが考えられます。

――本当の学びは,しっかりと動機づけられた学習者中心であることにより実現されるとの見方が強くなった

――生涯教育が叫ばれるなかで,自律的な学び方や学習方略を身につける必要が高まった

――教室の中で「学習者に何を教えるか」ではなく「学習者が何を身につけるか」という視点から,PBL(Problem-based Learning)が取り入れられるようになった

――授業時間が益々限られ(Schools just can't do it all!)、授業以外でも自発的に勉強する学習者となることが求められるようになった

――コンピュータやインターネットの発達によりe-learningを用いて、学習者が自分の速度に合わせ、時間と場所にとらわれず個別に,そして効果的に学習することが可能になってきた、等です。

 今回のシンポジュームでは、特に学習ストラテジー,e-learning,教師の家庭学習支援の観点から3人のパネリストに話していただき,フロアーの皆さんとの熱い議論・意見交換を通して,自律学習者をどう育てるか,について考えてみたいと思います。

 

 

提案1 自律的学習の方法について

竹内 理(関西大学)                 

本発表では、冒頭に自律的学習 (Autonomous Learning) の必要性と、自律的な学習者の育成過程における教師の役割について論じる。その後、時間の許す限り、自律的学習の方法について言及していく。具体的には、まず、筆者の外国語学習方略研究をもとに、メタ認知 (Metacognition) の大切さを、a) メタ知識 (Metaknowledge)b) メタ認知方略 (Metacognitive Strategies)にわけて述べる。次に、直接的な学習方法である認知方略 (Cognitive Strategies)について触れたのち、社会の中での学習を促進する社会・感情方略 (Socio-affective Strategies)についても言及する。最後に、自律的な学習の方法に唯一無二のThe Method がないことを強調し、そのうえで、学習者の自律の過程で大切になるポイントをまとめていく。

 

 

提案2 自律学習者をどう育てるか

亀山 太一(岐阜工業高等専門学校)

英語学習における基礎的な力は、語彙と文法理解、そして英語を発音(発話ではない)できる力だと考える。これらは、単に「教える」だけで身に付くものではなく、学習者自らが試行錯誤しながら学び取っていくべきものである。特に文法については、単に教科書を読むだけで理解できる学習者は少なく、ドリル形式の訓練を積み重ね、そのうえ適度な説明と適切な進度での学習を続けて初めて理解に達することができる。しかし、そのプロセスは地道な努力を要するものであり、1クラス40名の学生全員がそれを継続するだけのmotivationを持っているとは限らないし、適切な助言を与える教師の労力にも限界がある。
 そこで、このプロセスにコンピュータを利用することにした。語彙学習とテスト、名詞句の概念理解とその構成訓練、各種文法事項を含んだ英文の作成とそこで使われる品詞の学習、そしてシャドウイングによる発音訓練を、授業時間いっぱいを使ってひたすら行う授業を実践した。コンピュータを導入することによって、ドリル問題の正誤判定や誤りの指摘などはすべて自動化し、できるかぎり学習者が自律的に学べるような環境を構築した。これにより、学習進度の遅い学生の個別指導を授業中に行うことが可能になった。

 

 

提案3 自律した学習者を育成する家庭学習支援を目指して

城野 博志(三重県立四日市南高等学校)

高校教育の現場のような構造化された環境において自律学習を実現することは困難が伴う。一見すると二律背反的に見える両者ではあるが、自律学習を自己決定理論の見地から考えた場合、それが可能であると廣森(2006)は述べている。
 外国語学習のインプット量を確保する上で家庭学習は必要不可欠な要因であり、そこではまさに自律学習が求められる。教師が良かれと思って関与する家庭学習支援は、果たして自律した学習者を育成する上で、どの程度その目標が達成されているのか、絶えず検証が望まれる。今回の提案では、その検証方法を「自己決定理論」に求め、「有能性」「自律性」「関係性」の基本的欲求の3つの観点から家庭学習支援に考察を加え、どれほど自律性が保証されているか分析してみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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