わたしたちは、学会設立の趣旨を次のように考え、広く、入会希望者に呼びかけております。「わが国における英語教育は長い歴史を持ち、特に第2次大戦以後は義務教育の一環に採り入れられてきました。しかし、最近にいたり、教育界における諸情勢の変化、特に教育内容および教育方法の現代化の傾向の中において、英語教育のあり方・効果等については幾多の疑問が持たれつつあります。この時にあたって、われわれに必要なことは、人間形成のための教育において英語教育が果たすべき役割、特にその現代的意義、英語教育における教材の編成、その教授法の科学化、英語教育が対象とする学習者の年齢・能力・心理、英語教育における学力観、学力の評価測定の方法、英語教育に携わる教員の養成・研修の問題等に関し、英語学・英文法は言うに及ばず、ひろく言語学・文学一般・教育学、心理学、教育心理学、言語心理学、大脳生理学、言語社会学、文化人類学、教育方法学、教育工学、システム工学等、およそ英語教育に関連ある諸科学の示唆するところをひろく採用し、仮説の設定・実証・検証、その他学問の名に値する方法を幅ひろく採り入れることによって各種の研究成果を集め、そのおのおのを英語教育という一つの目的達成のための学問体系の中に位置づけていくことであろうと思われます。
以上は、本学会設立の一応の趣旨として掲げたものでありますが、この趣旨そのものにも、なお検討の余地がじゅうぶんあるものと思われます。特に、英語教育を一つの学問として樹立しうるとする根拠、あるいは、それを学問として追求する方法等については、なお幾多の異なった見解があるものと判断されます。本学会は、その設立後といえども、常に謙虚な態度をもって、これらに検討を加えていこうとするものであります。